お薬研究所 : 2011年2月号-#2 [2011.2.16up]
お薬研究所では「薬局でのこんな相談」や「病気の話」など、皆さまの健康に役立つ情報を掲載しております。
» こんな相談「坐剤の使用方法」
├ 1. 概要
├ 2. 坐剤の利点と不便な点
├ 3. 解熱鎮痛剤
├ 4. 痙攣を抑える坐剤
└ 5. 吐き気止め坐剤
これまでの記事(直近3件)
» 2011.02.08 お薬研究所:2011年02月号-#1 病気の話「インフルエンザ」
» 2011.01.20 お薬研究所:2011年01月号-#3 こんな相談「うっかり薬を飲み忘れた」
» 2011.01.12 お薬研究所:2011年01月号-#2 アレルギーを抑える食品
こんな相談「坐剤の使用方法」
概要
子供の発熱には、坐剤が処方される事も多く、はじめて使用するお母さんはドキドキです。坐剤が飛び出してしまったり、挿入直後に排便してしまったり・・・。使用するタイミングにも迷うことがあるようです。小児で主に使用される坐剤には、解熱剤・熱性痙攣止め・吐き気止めなどがあります。いずれも、頓用として用いられることが多いようです。
坐剤の利点と不便な点
利点- 吐き気や嘔吐、痙攣などの症状があっても使用できる。
- 直腸より吸収された薬剤は、肝臓での代謝を受けずに全身を循環することができる。(大人の直腸はおよ15cmでその肛門に近い1/3くらいの粘膜から吸収される薬剤が直接全身循環に入ると言われている)
- 消化管を通過しないため⇒消化酵素や腸内細菌で分解されず薬効が期待できる。
消化管に対する副作用の心配なく使用できる。 - 食事の影響を受けず、いつでも使用できる。(就寝時でも可能)
- 味やにおいの悪い薬剤の使用に適している。
不便な点
- 1日に何回も投与するような薬剤は適さない。
- 下痢症状を伴う場合には使用できない。
- 直腸粘膜を刺激し排便を促し、薬剤が吸収される前に排泄される。
- 持ち歩き時に其剤が軟化する。
- 1個の薬剤含有量が決まっているため、薬剤投与量の微調整ができない。
解熱鎮痛剤
小児においては、一番多く処方されるのが熱を下げるための坐剤です。
基本的に熱を下げる事は根本治療ではありませんが、子供の全身状態が悪ければ熱を下げて楽にする事で睡眠も取れ体力の消耗も防げます。一般的に38℃の発熱であれば、挿入後15分で溶解し30分~1時間で効果が現れ、約2時間後に最高血中濃度に達します。この時点で体温が下がっていれば効果があったことが分かります。挿入の際、直腸に便があると挿入の刺激で排便することも多いため、できれば排便後の使用が望ましいのですが、急を要する時には使用しなければなりません。挿入後坐剤が原型のまま脱出した場合には再度使用は可能ですが、15分以上経過し薬剤が溶けた状態で排泄された場合には、薬剤は吸収されている可能性が高いので、そのまま経過を見ることが大切です。効果は6~8時間持続しますので、間隔はしっかりとあけるようにします。
痙攣を抑える坐剤
熱性痙攣は、発熱初期(体温が急激の上昇する時)に発現しやすいので、0.5mg/Kgを目安にジアゼパム坐剤を挿入します。挿入のタイミングとして37.5℃を目安に発熱の前兆に気付いた時に1個を挿入します。その後38℃以上の発熱が持続する場合には、同量の坐剤を1個追加挿入します。2回投与すれば、その後は追加使用することなく熱性痙攣は予防できると言われています。
解熱剤の使用は控えることが望ましいのですが、併用をする場合にはその順序に気をつけましょう。
解熱剤の其剤⇒油脂性其剤 痙攣止め坐剤⇒水様性其剤をそれぞれ使用しています。痙攣止めの坐剤の主薬であるジアゼパムは脂溶性の物質であるため先に挿入した解熱剤の油性其剤に取り込まれ効果が得られない事があります。
急な発熱による痙攣がおこったら、まず痙攣止めの坐剤を挿入します。15分ほどで効果が見られます。発熱に対しては衣類を脱がせる、側頸部や脇の下を冷やしたりして様子を見ます。全身状態が悪く解熱剤を使用する場合には、30分~1時間あけてから使用するようにします。
吐き気止め坐剤
吐き気止めの坐剤は、体液と体温で溶解する其剤を使用しており10~20分で溶解しおよそ1時間ほどで、効果が見られます。このタイプの坐剤も痙攣止めの薬剤と同様、解熱坐剤と併用する場合には使用の間隔を30分~1時間あけて挿入することで薬剤が取り込まれるのを防ぐことができます。
いずれの薬剤も全身状態をよく観察し、必要に応じて使用するよう心がけましょう。